「春」


「卒業おめでと、羽衣ちゃん」

「ありがと先生!」

突然飛びつかれて、

此処は校門前だぞ、と悲鳴をあげる。

羽衣ちゃんがほんとうに可愛く笑って、

「卒業したからイイんだよー!」




彼女は4月から専門学校に行く。

看護学校だそうだ。

何で、かなんて聞くのも野暮で、

俺と一緒に居たいから、らしい。

「・・・可愛いなぁ」

思わず呟くと羽衣ちゃんが見上げてきた。

「なあに?先生背高いから聞こえないや〜」

笑って、頭を撫でる。

「髪長いな、綺麗に伸ばしてるのか」

「先生長いのスキでしょう」

このところ油断していると、一本捕られる。




診療所への道を歩きながら、

羽衣ちゃんが腕を絡めて何か云いたそうに。

「・・・どうした?」

「・・・あのね」

俯いて恥ずかしそうに云うから、聴き取る為に少し身を屈める。

その耳に、囁かれるように、ちいさな声で。

(あたしもうおとなだよ)




いつものように、とはいかないまでも

まあいつも通り手伝いをこなしてくれた

羽衣ちゃんを家に帰してから、

リヴングのソファに座ってさっきの台詞の意味をよく考えてみた。

帰る時は羽衣ちゃん普通だったな・・・

あー、あれ、どういう意味だろ。

何、大人?・・・えーとそれはつまり・・・

そこまで考えた時うしろから突然兄貴が

俺の肩を叩いた・・・。

思考は、ふっとんだ。




「何をそんなに真剣に考え込んでいたんだ」

笑いながら兄貴はそれでも結構本気で

俺の考えてる事を聞いてくれた。

さっきからぐるぐるしている考えを整理しながら話してみる。

「そりゃ、なんだお前」

突如兄貴は笑い出した。

「決まってるんじゃないのか?お前の中でも整理ついてるんだろう」

さすが、兄貴・・・って感じだった。

伊達に23年俺の兄やってない。

ただ認めるのに臆病で、

ちょっと迷っていただけ。

明日は土曜日だ。




「じゃあ帰りまーす」

玄関から羽衣ちゃんの声が響いて。

器具を片付けていた俺は、慌てて診察室から飛び出した。

「羽衣ちゃん、」

言え、云ってしまえ、

羽衣ちゃんはきょとんとして俺を見つめている。

心臓が喧しい。

ええい、情けない。

小さく咳払いして、呼吸を落ち着けて。

「羽衣ちゃん、帰んないで、欲しい、かも・・」

・・・。目が泳ぐ。失敗だ・・・だけど。

羽衣ちゃんは笑ってくれた。

「じゃあ、お腹すいた?ご飯作ったげる!!」


end




[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析