「冬ー0」


今日から私は此処に住む。

両親の敵、この板倉組に。




「よく来た」

畳の部屋に通されると、奥の方に彼が見えた。

私を切望した人。切望の余り両親を追い込んだ人。

黙り込んでただ座布団に腰を降ろす。

「・・・来ないかと思っていたぞ」

どちらかといえば整った容貌で。

でも俗に云うインテリとは程遠く。

彼は確かにこの世界に生きる男の匂いがした。




つまり私は囲われるのだ。これから先、ずっと、この男に。




目の前に座った娘を見て、

いつもの表情が崩れそうになる。

それほどに、美しかった。

手に入れたかったのだ。

俺のこの手に。

落ちてきた鳥は頑なで。

心までは奪われまいと?

其処まで考え、ふと気弱になった。

果たして両親の敵である俺を

愛してくれるだろうか?




「板倉さん、とお呼びすれば・・?」

遠慮がちに聞く。

返事は、無い。

「駄目ですか、それじゃあ」

「賢祐さん、と呼んでくれたら」

それか、と彼は続ける。

「お義父さん、と」

耳を疑う。

どうして?聞き返したら思いがけず彼は少し微笑んで。

「戸籍上は俺の娘という事になっている」

邪気の無い、ほんとうの、ほほえみ。




次の日から不思議な生活が始まった。

義父は、私に触れはしないし、

私も、触れない。

頭は撫でられたけれど、いやらしい感じではない。

一体どういうことだろうか?

真意が見えない。

好意だけが垣間見える。

それに、戸惑う。




どうしてだろう?

聞きたいことはたくさんある。

それが全て、

最後には何処に行き着くのか?




愛している、それだけは云える。

心の中に喩え欲があったとしても。

隠しとおして、只慈しむ。

苦しいけれどそうすればきっと、

彼女は俺を愛してくれるようになるのではないか?




お互い、こう思っていた。

それが、今から2年前くらいの話―――――。



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