飛び出す絵本




 「あー・・・。」
 キリエは自分のベッドにごろんと寝転んだ。いや、倒れこんだか?まぁどっちでもいいけど。
 「なんか疲れた・・・。」
 あの本がかばんからはみ出ている。
 「・・・・・・・。」
 ・・・魔法・・・ねえ・・・むしろ呪いなんじゃないのか?
 走りすぎて足痛いし・・・。とりあえず明日は筋肉痛だな。
 「・・・。」
 あれ・・・何の本なんだ?
 「・・・見てみよっと。」
 かばんの肩掛けごと足で引き寄せる。が、足がつりそうになったので自分が降りる。
 本の表紙を開くと、1ページ目には昔ながらの悪魔と昔ながらの妖精―――角が生え、ヤギ足で尻尾が
 矢印で妙なズボンを穿いた悪魔と、トンボの羽と少しとがり気味の耳、花びらで出来た服を着たベタな妖精だ。

   ―――と。
 悪魔の目がキョロッとこっちを向いた。

 "パタン。"
 
 『あっ、こら!閉じるな!!』
 な、なんだこの本・・・からくり絵本かっ?!
 『こ、このやろ・・・閉じても無駄だっ!!出せコラ!!うにっ、うにににににぃーーーっ!!』
 うげぇ、本の隙間から爪がっ、しかも指がぁっ!!
 『早く出しなさいよ!どんどん出てきてるんだからっ!!あ、痛っ、腕どけてよ!!』
 あわわわわ、もう1匹いるぅ!!て言うかついに頭が!!
 『うぬぬぬ・・・あ、あた、頭さえ出てしまえば・・・って、いい加減どけい!!』
 「いってぇ!!」
 指を引っかかれて、思わず手を引っ込めてしまった。
 『こっちだって痛かったんだよ!!呼び出しといて勝手に閉めてんじゃねえよ!!』
 『そうよ、そうよ!!みてよ、私の美しい腕に傷が付いちゃうとこだったじゃないのよ!!』
 「・・・・・・。」
 体長約13cmの珍しい虫が文句を言っている。
 『俺だって首を挟まれたんだぞ!!』
 体長約13cmの珍しい虫がクレームをつけてくる。
 『ねぇっ、何をぼさっとしてんのよ!!』
 た、体長約13cmの珍しい虫がにらみつけてくる・・・。
 『おいっ!しっかりしろ!!』
 「・・・あ?」
 2人(2匹?)とも、腰に手を当ててこっちをにらんでいる。
 思わずキリエは深呼吸した。

 『・・・落ち着いた?』
 「・・・まだだ・・・でもお前らほんとに・・・」
 再び深呼吸。2人をよく観察してみる。
 「・・・しらじらしいほど悪魔と妖精なんだな。」
 『うるせえよ。お前、名前は?』
 「・・・キリエ・・・キリエ・トス・エテアロッド。」
 『・・・あんた、割と落ち着いてるわねぇ。見慣れてんの?』
 「まさか。」
 見慣れているなら最初から落ち着いてるだろうが―――と、心の中で呆れた。
 『俺はロガフィエル、そっちはアリンネヴィアだ。まぁよろしくな。』
 自己紹介する悪魔なんか聞いたことがない・・・い?!
 「お、おいっ、よろしくってなんだ?!よろしくって!」
 
 一瞬の沈黙の後、

 『・・・何言ってんの?注意書き読んだんでしょ?』
 『信じてなかったのか。』
 2人とも呆れたように言う。
 「…注意書き?なんだそれ。」
 『ほらっ、ここにあるじゃ…。』
 本の表紙をひっくり返す。
 『…ねぇな…。』
 よくよく見ると、ロガフィエルたちがいたのは1ページ目ではなかった。
 前の2ページ分が丁寧に切り取られていたのだ。
 「…なんて書いてあったんだ?注意書きに。」
 『言うのかよめんどくせぇ、ちっ。』
 「…うるせえな。いいから言えよ。」
 
 『汝、己を嫌っているならば』
 『汝、己を変えたくば』
 『汝、危険を冒すも必要ならば』
 『本の扉を開けてみよ!!』
 『勇気を持って!!』
 『さすれば男女一組の使いが、』
 『汝の前に姿を現すであろう!!』
 『アディオス、汝の命運を祈る!!』
 「…おい、最後のアディオスって何だ。」
 『知らん。』
 
 それにしても、と三人が首をかしげた。
 「何でその注意書きが破られてんだよ。」
 『首かしげてんのが見えないの?私達も知らないのよ。』
 「そうか…まぁ誰かがいたずらででもしたんだろう。」
 『…いいのか、それで。』
 「いいんだよ。それよりも。」
 改めて2人に向き直る。
 「本取った後、何でか家に向かって全力疾走しちゃったんだけど、俺。
 なんか魔法でもかかってんのか?」
 『…あぁ、あれは呪いよ。』
 「やっぱりか。」
 アリンネヴィアの話によると、"本"は開ける人のそばに別の人がいると
 どの人を変えればいいのか解らなくなってしまうので、『自動的に人の
 いないところに向かわせる』呪いがかかっているらしい。
 「恐ろしい呪いだ…おかげでこっちは明日全身筋肉痛だ。」
 『ああ、俺もかけられた事があるが、次の日一日中家ん中にこもってたぜ。』
 『だらしないわねぇ。』
 『う、うるせえっ!!大体かけたのはお前だろうが!!』
 『オーホホホ、そうよ、かけたわよ!何か悪い?ケンカの最中にかけて何か悪い?』
 『ムキィーッ!!ムカツク!!』
 「まあまあ…で、俺はどうすればいいんだよ。」
 早くも"妖精と悪魔"に順応しつつあるキリエが口を挟んだ。
 『あんたが人前で裸踊りしそうになったから私はねぇ!!』
 「……何の話だ。」
 『あぁ、お前がこれから何をすればいいかって?』
 (いつの間に話が切り替わったんだ)
 『あんたは…えーっと、何をすればいいんだっけ?』
 「おい…しっかりしてくれよ。」
 『えーっとなぁ…えーっと、あ、そうだ!!』
 『そうそう、それよそれ!!』
 2人の顔がぱっと明るくなった。
 「どれだよ。」
 キリエもぐぐっと身を乗り出した。
 『ほら、えーっとアレアレ!のどまで出てきてんだけど…。』
 『私だってアゴまで出てきてんのに!』
 『フン、俺だって舌まで出てきてらぁ!!』
 『それがどうしたのよ!私なんかねぇ、歯の裏側まで…。』
 『よし、俺なんか唇の裏だ!!』
 『えっ、それなら私は…それなら…何よ、もう言うとこがないじゃないの!!』
 「なぁ、慣用句的表現はどうでもいいと思うんだけど。」
 うんざりして改めて2人をよく見ると、
 「…ロガフィエル…お前いつの間にハムスターになったんだ?」
 『オーホホホ、可愛らしいこと!!』
 『…あ、思い出した。』
 『えっ、うそ何それ!!まぁ私のおかげでしょうねぇ、フン!!』
 「…あの…で、俺はどうすりゃいいの?」


top


[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析